数時間後――。
「え~っとだな……」
集まったメンバーを見回しながら俺は固まっていた。なぜならそこにはいつものメンバー以外の人がいたからなのだが、なんというかその……華やかなのだ。――というか、いつの間にか人多くねぇぇぇぇぇ!?
いつものメンバー五人に、三和・遠野・妻野までいるし。さらになぜか正晴までいる。一番危ないって分かってんのかなコイツと心の中で独り言ちる。
「何で、こんなに多いの?」 俺は率直な疑問を五人の方に向けた。「ええと、玲子にあの後連絡したら、遠野さんと妻野さんもその神社に興味あるっていうから、じゃぁ一緒にどう? って話になって、こんな感じかな?」 相変わらずのんびり屋さんっぷりの響子が俺の方にウインクする。「はぁぁぁ~」 先が思いやられてため息が出た。「じゃぁ、そろそろ時間だから行くけどいいかな?」
「「「はぁ~い」」」「「「いいよぉ」」」「よっしゃ!!」 なんだろう。なにか複雑な気分だなこれ。 バス停に向けて歩き出した女子組の後を男子2人が付いていく。「なぁ~、真司」
「なんだよ?」「どの娘《こ》がお前のカノジョなの?」「はぁぁぁ!?」「とぼけんなって! いるんだろ?」「い、いやいねぇし!! そもそもいたらそんな湖なんか怖くて行けないからな!! つうか、お前が一番気をつけなきゃなんねぇんだからな!! 普通来ないぞ!! お前バカなの!!」 息を切らせながら正晴に否定する。「わかった!! わかったから!! で、どの娘《こ》なん?」
――ぜんぜん分かってねぇなぁコイツゥゥゥゥ!!
今日の行き先にとてつもなく不安がよぎっていく。 バスの中ではもう完全に遠足状態だった。 きゃいきゃいと女子組がはしゃぎながら最後尾を独占している。 俺はもう何かを言うのをやめた。だ数時間後――。「え~っとだな……」 集まったメンバーを見回しながら俺は固まっていた。なぜならそこにはいつものメンバー以外の人がいたからなのだが、なんというかその……華やかなのだ。――というか、いつの間にか人多くねぇぇぇぇぇ!? いつものメンバー五人に、三和・遠野・妻野までいるし。さらになぜか正晴までいる。一番危ないって分かってんのかなコイツと心の中で独り言ちる。「何で、こんなに多いの?」 俺は率直な疑問を五人の方に向けた。「ええと、玲子にあの後連絡したら、遠野さんと妻野さんもその神社に興味あるっていうから、じゃぁ一緒にどう? って話になって、こんな感じかな?」 相変わらずのんびり屋さんっぷりの響子が俺の方にウインクする。「はぁぁぁ~」 先が思いやられてため息が出た。「じゃぁ、そろそろ時間だから行くけどいいかな?」「「「はぁ~い」」」「「「いいよぉ」」」「よっしゃ!!」 なんだろう。なにか複雑な気分だなこれ。 バス停に向けて歩き出した女子組の後を男子2人が付いていく。「なぁ~、真司」「なんだよ?」「どの娘《こ》がお前のカノジョなの?」「はぁぁぁ!?」「とぼけんなって! いるんだろ?」「い、いやいねぇし!! そもそもいたらそんな湖なんか怖くて行けないからな!! つうか、お前が一番気をつけなきゃなんねぇんだからな!! 普通来ないぞ!! お前バカなの!!」 息を切らせながら正晴に否定する。「わかった!! わかったから!! で、どの娘《こ》なん?」――ぜんぜん分かってねぇなぁコイツゥゥゥゥ!! 今日の行き先にとてつもなく不安がよぎっていく。 バスの中ではもう完全に遠足状態だった。 きゃいきゃいと女子組がはしゃぎながら最後尾を独占している。 俺はもう何かを言うのをやめた。だ
仲がいい二人が部活があるって出ていった後の喫茶店内にて、新たな行動計画を立てることになった。「今回の元凶は間違いなくソッチなのね?」 大きく一つため息をつくカレン。「ああ、あのおじさんが言ってた事が気になって調べたんだ。間違いはないと思う」 コーヒーをクチに運びながら話す。「じゃなまたみんなであの湖に行かなきゃね」「そうねぇ、しかも縁結びの神社なら一度は行っておかなきゃでしょう」 と理央アンド響子姉妹。「絶対に一緒に行きます!!」 むんっ!! と両手を握りしめ気合が入る伊織。「え~っと、この五人で行くって事で決定……なのかな?」「あたりまえでしょ! ここまで参加したのにそこに行かないでどうすんのよ!」 カレンがなぜかやる気満々である。「それにこの件はもともとが私が持ち掛けた話でもあるし、私は最後まで付き合うわよ」 そのカレンに響子も続く。 理央も伊織も「もちろん!」って顔してる。「わかった。みんなありがとう」 立ち上がって、ペコっと頭をさげた。 頭を上げたのと同時ぐらいにカレンが手帳を出して何かを確認し始めた。「そうと決まれば早い方がいいよね。じゃぁ明日決行よ!!」 その一言に俺はあきれたのだが、不思議と否定の声が上がることなくそのまま確定した。集合場所や時間。移動手段や費用の話までが次々と決められていく。 もちろん俺はただそれを横目に聞きながらコーヒーをすするだけだった。「じゃ、これで決まりでいいよね、シンジ君」「ぶふぅ!!」 いきなり話を振られた俺はコーヒーをちょっと噴き出した。それを伊織が黙って布巾でふきふきしてくれた。ありがとう伊織、さすが我が義妹《いもうと》だって心で思う。 そしてみんなの視線が俺に集まる。「な、なんで俺に聞くの?」「何言ってんの? シンジ君がリーダーでしょ?」 うんうんとみん
正晴の言葉に驚愕して体から負のオーラが出そうになった時、言葉と同時に鉄拳が正晴に飛んでいた。「ちょっと、正晴!! この藤堂クンが前に言ってた人だよ!!」――かなり強めに突っ込まれてたけど痛そうだなぁ……。 しかしこの二人、くっついたり別れたりしているだけあってさすがに仲がいいし。ぎこちなさが無い。「え? 真司が!?」 どんな話されたのかは分からないけど、この子も相手が男だとは伝えてなかったみたいだな。 さりげなく会話するふりをしながら、俺は正晴の様子をうかがう。遠野と妻野のカレシは影響が出ていると言っていたから、目の前の、正晴にも出ていると思ったからだ。しかしそんな気配は感じられなかった。 それとは別に三和の方は――。「何だよ真司、それならそうと昔から言ってくれりゃいいのに」 真顔でそういう正晴に俺は苦笑いで返した。「言えるわけないだろ……そんな事」 二人がカレン組の方へ腰を下ろしてようやく始まりの盛り上がりは落ち着いた。「三和さん体調良くないんですか?」 俺の隣で静かにホットチョコレートを飲んでいた伊織が[三和]の方を見て話しかけた。「ええ、その……わかりますか?」 皆がうなずいた。「最近少しづつですけどダルさとか出て来ていて、アレはまだ見えてるし。声まで聞こえるようになってしまって」「あの二人はどうなの?」「それが、響子ちゃんからあの湖に行って来たって連絡あった日から、そういうのは全然なくなったって言ってて。私だけいまだに続いてるの」 響子の問いかけにも疲れている感じに答える。――少し解決を急いだほうがいいかもしれない。 俺の心がそう言い始めてる気がする。「すいません三和さん、聞きたいことがあるんですが、その現象が現れた日は1人でそこに行ったわけじゃないですよね?」「え? ええ、そうです」
座ってしばらくは静かな時間が流れる。 腰を下ろしてからも伊織がしたを向いたままなのだ。 一つため息をついて、バッグから水のペットボトルを2本取り出して1本を伊織に渡す。「ありがとう」って受け取ってくれた。「伊織、話があるんだろ?」「あ、うん……そうなんだけど、ちょっと聞きづらいというか……」「何だ? 別にお兄ちゃんは伊織に隠してる事なんてないぞ? あ……あれか? あれの事か?」「あ、あれって何? そっちも気になるんだけど!!」「え? あ、いや、知らないなら別に、うん」 何かかみ合わない会話が続く。 急に正面を向いた伊織が胸の前で祈る様なポーズを作る。「お、お義兄ちゃんあのね!!」「お、おお。なに?」「お義兄ちゃんってカレンさんの事が好きなの? もしかして、つ、付き合ってるとか……?」――義妹《いもうと》からとんでも発言きたぁぁぁぁ!!「ぶふぅっ!!」 飲もうとしていた水を思いっきり吐き出した。「ゲホゲホッ!! ガホッ!!」「だ、大丈夫お義兄ちゃん!!」「だ、大丈夫……。つーか、なんてこと聞くんだよ」「だって……仲いいんだもん。カレンさんとお義兄ちゃん」 もじもじとしだした伊織。こういうところは女子だなぁて思える。「ああっと、カレンとは何でもない!! カノジョとかでもないぞ? まぁしいて言うなら、ケンカ友達の一人かなぁ……?」「そ、そう!」 途端に伊織の表情が明るくなったような気がする。――なんか鼻歌みたいなのも聞こえるし最近情緒不安定すぎじゃないか?「友達……か」「ン? なぁに?」 無意識にあの女子組三人を友達というくくりで呼んでしまった自分に少し違和感を覚えた。少し前の自分には考えら
「あ~!!」 湖からの帰り道。 理央のから離れたモノの影響を考えて少し時間を休ませてから来た道を歩いている。その中で俺の前を歩いていたカレンの突然の咆哮である。もちろん皆がビクッとした。林にいた鳥もバサバサと飛び立つ。「な、なんだよカレン!! ビックリするだろ!!」「思いだした!!」「何を?」 皆の視線がカレンに集中する。「あの人が言っていた秋田真由美って名前ね、どこかで聞いた事があるなぁって思ってたんだけど」「だけど?」「話のなが~~~いおばあぁちゃん家で聞いたよ!!」「「「えええぇ!!」」」「な、なんで言わないんだよ!!」「だって、今思い出したんだし、それに話が長くて今まで忘れてたんだもん」――やっぱりカレンはポンコツお嬢だと思う。ステージの上のカレンとは別人だ。 浜辺で話した幽霊である秋田真由美は、今まで会ってきたモノの中でも、表現が合ってるかはわからないけどいい人だった。 だから素直に話を聞いたのだが、彼女はただ静かにいたいだけなのだと言っていた。自分はここから離れてはいけないのだと。 そしてここ最近の湖周辺での事故や事件にはかかわっていない。別のモノがしているのだとも言っていた。 ならば俺たちはまた別の方向からこの件を考えなくてはならないだろう。「『今までしたことはあの子たちには申し訳ないと思ってるわ。もうあの子たちには影響しないし、これかも他の方々にはしないわ。約束する』」 真由美はそう言ってくれたのだ。俺はそれを信じたいと思う。「これからどうするの?」 てくてく歩きながらカレンが問いかける。「うん、あの人の言う事を信じるならまずはこの件を調べ直さなきゃいけないと思う」「そうね。中に入られてた私が言う事じゃないかもだけど、あの人、嘘は言ってなかった感じがしたわ」 身体を使われていた理央が少しダルそうな体を振り向かせて共感してくれた。「それに、気になることも言ってたし」「そうなの?」
ソコは静かな水面に不釣り合いなくらいすごく空気が重かった。 湖に近づくにつれて雰囲気は悪くなり、それまでははしゃぐ声も聞こえていた女子組からも、その声は小さくなり聞こえなくなった。「着いた……みたいだけど、みんな体調悪くなったりしてないか?」 振り返って確認すると、みんな声は出さずにコクンとうなずくだけで返事する。 ここにいる人達はみんな一度はソレを経験して、ここの空気が重い事を感じているみたいだ。「それで、ここでどうするの?」「えと、水に入った後で皆さん変わってしまったと言ってました」 カレンと伊織が荷物を置いて浜を降りていく。「あ、待って待って」「やる時はみんな一緒にだよぉ~」 市川姉妹もその後に続く。 俺も急いで荷物を置きみんなのいる場所へと向かった。「せぇのぉ~三、二、一、はい!!」 ぽちゃっ ドボンっ ちゃぷ いろいろな方法でいろいろな個所を各々が湖に体をつける。 そのまま五分。「よし、みんな湖からいったん離れてくれ」「はぁーい」—―なんかこういう時みんな素直に従ってくれるんだよね。やりやすいからいいんだけど。なんかくすぐったい感じがするなぁ。「どう? 何か変わったりした人いるかな?」 女の子四人で顔を見合わせている。 俺が見たところ変わった様子は無いみたいだけど油断はできない。「そういえばさぁ……。私達って誰もカレシいないんじゃなかったっけ? これって検証になるの?」「いや、その検証も大事だけど、俺はこの場所を見たくなったんだよ」「へぇ~、どうして?」 こちらに振り返った響子に聞かれる。 カレンの言った事は間違いなくその通り、カレシも彼女もいない俺達ではソノ検証は出来ない。それは知っていた。なのに響子からの疑問[なぜ来たかったのか]に